2020年10月22日 19:00 ~ 21:00 開催
聞き手:本間(TOKYO TEA PARTY部長)
奥富(日本茶インストラクター協会東日本ブロック長)・
竹内(日本茶AWARD東京事務局)
●自己紹介(敬称略)
株式会社おさだ製茶
静岡森町製茶問屋、関東圏への卸、県西部での小売などをしています。天竜水系と言う手摘みのお茶。昔からのオーソドックスの煎茶で受賞しました。
[プラチナ賞受賞]
2019 手摘み 天竜水系
鹿児島堀口製茶有限会社
鹿児島の製茶問屋。今回のインタビューには、仕上げ製造部で出品茶の仕上げに携わった開発部の私、入来が出席しました。
[プラチナ賞受賞]
2018 露地さえみどり2017
2019 露地さえみどり(シン) 、木魂(露地)極
カネトウ三浦園
島田市カネトウ三浦園です。自園自製で、販売もしています。牧之原台地に掛かる場所で深蒸し茶をメインに色々作っています。
[プラチナ賞受賞]
2016 深蒸し煎茶、紅茶
2017 露暁台地の「さえみどり」
さしま茶 吉田茶園
茨城猿島茶産地の中の古河市にて煎茶と紅茶を作っています。自園自製と販売を行なっていて、AWARDには紅茶で出品し昨年賞をもらいました。
[プラチナ賞受賞]
2019 IZUMI BLACK TEA 1st Flash 2019 silver moon
丸高農園
静岡市で自園自製と販売をしています。中山間部で傾斜地が半分のため、大量生産はできないので半発酵茶や特徴のある品種茶を生産をしています。大部分は深蒸し茶、一部を半発酵茶にしています。
[プラチナ賞受賞]
2014 発酵系のお茶
2015 発酵茶
2016 煎茶、ほうじ茶
2017 半発酵のほうじ茶、茶は寿ふ「香寿」
2019 茶は寿ふ「香寿」
株式会社銘茶関口園
宇都宮市で小売をしています。お茶は茶問屋に依頼し特別に製茶してもらい販売しています。 上皇・上皇后両陛下が宇都宮駅で降りられた際に、駅で雲龍をお飲みになられました。また雲龍を別途献上でき、とても光栄でした。
[プラチナ賞受賞]
2018 煎茶雲龍
株式会社新緑園
宮崎の新緑園 黒木です。宮崎で茶畑も持ち、市場で買い付けもして、小売りをしています。また関東のスーパーでも扱ってもらうようになってきましたが県内ブランドでも頑張っています。
[プラチナ賞受賞]
2018 煎茶まれもの
●受賞茶をAWARDに出した理由や、出品にまつわる思い出、AWARDの良い思い出、悪い思い出などをお願いします。
株式会社おさだ製茶
製茶問屋で深蒸し茶を中心に作っています。AWARDへはそれも含め毎年いろいろな部門へ様々なお茶を出品しています。微生物の発酵茶を出して審査員奨励賞もいただいたこともあります。
昨年のお茶はダメかと思ったけどプラチナ賞に残り、意外な結果でした。
それは30年前から時が止まっているような手摘みのお茶です。年配の方も一緒に摘んでいます。
それをブレンドせずに特徴を生かして作りました。
もともと海外では評価をもらい売れていましたが賞をとった後は国内で売れるようになりました。地域は気象に左右される地形なので今年は去年より良くなかったように思います。
今年も開催されていれば色々出したかったです。
来年度以降も特徴のあるお茶を色々出品して行きたい。最終的には発酵茶でプラチナ賞を取りたいです。
鹿児島堀口製茶有限会社
弊社では荒茶を生産し、その一部を仕上げて関連会社の(株)和香園で販売しています。栽培面積が広いので多様な茶種を生産しています。 AWARDでは最初に粉末茶が審査員奨励賞をもらいました。 2017 年、生産される多くの荒茶の中で、露地のサエミドリに目を引く良いものがあったのですが、その年には出品できずに、 翌年仕上げて深蒸しの露地部門で2017年産として出品しプラチナ賞をもらいました。2019年同じほ場のサエミドリを深蒸しと浅蒸しで露地の2部門に出品して両方評価していただきました。 お茶を作っていて、本来目指しているものを評価されるにはどうすれば良いか、いつも迷っています。自分の好きなお茶と、評価され選んでいただけるお茶は違うと感じています。 AWARD に出品すると皆さんの意見を聞け、その選んでいただけるお茶の皆さんの好みが勉強できて良いです。出品するといただける報告書では、試飲された方のいろんな意見が聞けて、それだけでも相当勉強できて出品する意味があります。今後は紅茶なども入賞を目指したいです。今回出席されている吉田さんに紅茶作りの教えを乞いたいですね。
「ヒカリエで飲んで印象的だった他の方のお茶はなんですか?」
長崎の茶友さんのあさつゆ。2018年に大賞を取られた時、最終結果が出る前のフロアでのプレゼンテーションで試飲させていただいた時に、大賞を取るようなお茶はこんなものだろうなと事前に感じたことを覚えています。その時に口に含んだ時の感覚は今でも心に残っています。
カネトウ三浦園
いつも複数のお茶を出品しています。深蒸しの被覆と露地。紅茶・普通煎茶などです。
深蒸しで被覆したつゆひかりで受賞した時は、他に形状の良いものを期待して出したのですが、それはダメで記念受験のような気持ちで出したつゆひかりが入賞しました。
自分の思いと実際は違うと感じました。またAWARDでは自分では気付いていないようなコメントがもらえます。自分ではイマイチと感じていても結果的に賞をもらったりします。だからこそ審査してくれた人からのコメントをもらいたい、出さないことには始まらない、なので出品をしています。
このところ感じることは皆さんの技術レベルが上がってること。また深蒸しは出品者が多く受賞しにくいと思うので、ここで頑張りたいとも思います。気象条件、運もある。次年度以降も色々出したい。目指せヒカリエ、同窓会のような感じで全国のいろんな人に会いたい。ホームページに載ると全国の人の目にしてもらえるのです。
最後一つ、聞いてもらえるなら、今年中止になってしまった為、準備したお茶1種につき10㎏が在庫になってしまった!!ことです。そのお茶が熟成されてお茶として価値が上がっていたなら茶商の人には単価上げて買って欲しいです。
(司会の本間 生の声はとても参考になります。)
さしま茶 吉田茶園
(ご自身のお茶を飲みながらお話くださいました。)
AWARDに出す理由の一つは報告書をもらえるから、その内容が素晴らしいと思います。
第3者の評価をもらえます。
5年くらい前から出していますが賞をもらったのは去年が初めてでした。
こちらで扱う紅茶品種のライバルはべにふうき。大体評価は上から6つくらいはべにふうき、その次が「いずみ」そんなことが続きました。
プラチナ賞を受賞して、三次審査では1000人くらいの人に飲んでもらい評価してもらったことが嬉しかったです。大勢の人に飲んでもらえて嬉しかったですね。
いずみという品種がマイナーなため、知ってもらえることも嬉しかったです。60年以上前に輸出用に作られた品種で輸出用に作られた釜炒り茶、北アフリカ用でしたが実際はそうはならなかった歴史があります。また福岡で育種された古い品種です。知ってもらうことが目標でAWARDで叶いました。植えてみたい人から栽培方法などを聞かれたりもしました。AWARDに出品し世界が広がった気がします。
TOKYO TEA PARTYは昨年初めて参加しました。華やかな場所と聞いて尻込みをしましたが、せっかくなので来てくれた方に楽しんでもらえるようなしつらえを提供できればと思ってだいぶ研究して参加しました。緊張したけど楽しませてもらえました。
今年もあったら2016年に植えた若木のいずみを出したかったです。(それまでは20年前に植えたもので作っていました。)
丸高農園
我が地域が山間地の傾斜地の為、お茶の大量生産には向かないから、
作るお茶に付加価値をつける為に毎年半発酵茶やそのほうじ茶を作りますが、
その評価を知りたくてしてAWARDに出品しています。
60キロの製茶ラインで1回12キロしかできないお茶を出しています。
半発酵茶は本場の台湾茶が見本で、毎年試行錯誤してやり方を変えながら作っています。
香寿というお茶は父親がこだわっていて台湾製の機材を使って作り、出品しています。
ミル芽で採っていて日本茶のうま味も香りもあるのでそこも上手く出すことを
狙って作っています。また毎年ヒカリエに行くと他の方のいろんなお茶を知れるのが良いと
思っています。
「ヒカリエで出会ったお茶で印象的なのはどんなお茶ですか?」
玉露で冷たく出していたお茶があって、それがすっきりして美味しいと思っていました。出しているのとは違うタイプにも惹かれます。
株式会社銘茶関口園
AWARDが最初始まった頃は、知らなかったです。たまたま何かの時にホームページを見つけ、
こんなのがあるのかと知りました。小売りする側で出品できる品評会は無いので、あればいいなと思っていましたし、もともと品評会には興味があったのでその翌年初めて出品しました。その煎茶「天下一」は、ほうじ茶一歩手前まで火を入れる金色透明山吹色に出るお茶で、これにどういう反応があるかを見てみたくて出品しました。
実際報告書を見た時には突き刺さる言葉が多かったです。いろんな所に納品しているお茶なので、そんなことないだろうと思いました。その後煎茶雲龍を何かのきっかけになればと出品しました。2016年奨励賞を受賞した時、作ってくれた農家さんも喜びました。
翌年ファインプロダクト、2018年はプラチナ賞を受賞。見た目薄黄色で緑色には出ない、甘みがないなどと言われたりしたが、本来のお茶の色は緑ではなく、山あいのお茶は山吹色だということを伝えていくべきだと思いましたし、こう言うお茶もあると伝えるいい機会だと思いました。
「お茶らしいお茶とはどんな味ですか?」
香り味わいと甘味が口の中にパッと広がる味をイメージしています。その3つを基準にしています。
全国的にお茶屋さんでは同じものしか置いてないと言われるけど、実は違うんだよと毎回言っています。酒蔵と一緒です。店の要望を聞いて作ってもらっています。そんなことを知ってもらいたいと思っています。
株式会社新緑園
きっかけは社員がAWARDのことを知って、ぜひ出しましょうと言ったからです。
最初はピンとこなかったですが出品してプラチナ賞をもらい、スイッチが入りました。
5年前に初めてヒカリエに行って会場を見た時に涙が滲みました。宮崎はローカルで茶の仕事をしていても表舞台に立つことはないのに、このような場所があることが嬉しかったです。
実行委員の君野さんに、こんな場所を作ってもらってありがとうと伝えました。
消費者によって選ばれるステージがあることもありがたいと思っています。
受賞は、生産者も喜び励みにもなります。そこを意識して仕入れ、いいブレンドもする、トータルでモチベーションアップにつながっています。去年、宮崎は出来が悪かった気がしていました。実際AWARDでも宮崎のお茶が調子悪かった。ということは、味はちゃんとみてもらっているんだ、いい審査をしてもらってるんだと感じました。ヒカリエには社員も交代で行くようにしていて、社員にとってもモチベーションが上がるように思える。来年も楽しみ、良いお茶を作りたい。
「深蒸し茶作りで努力したことはありますか?」
イメージで考えているのは、濃い深蒸しはあるけどうま味甘みが残っているのは少ないことです。葉に力があるものを選び、通常販売している主力の深蒸し茶にするお茶を一生懸命探しています。
●これから日本茶AWARDに期待していること、どんなお茶を出そうと思っていますか。ご意見あればお願いします!
株式会社おさだ製茶
通常の品評会だと特徴のありすぎるものはダメですがAWARDはそれを受け入れる素地があるからいろんな取り組みをしてもらいたいです。いろんなニーズがあって飲むシーンも多様化していますから。
ペアリングも含めて提案して消費者の選択肢を広げたいです。日本茶カフェも飲む機会も増えているだろうから一つずつ階段を登ってもらい、知ってもらいたいですね。アメリカだと若い人ほどお茶を飲み、世界的に見ても緑茶の生産量は増えています。緑茶の未来は明るいと思っています。
AWARDはやると決めてやってほしいです。賞があることで切磋琢磨していく。
プラチナ賞をとったときの評価は良いです。
報告書は複数出品するとその数送ってもらえるけどそんなに刷数はいらないです。
鹿児島堀口製茶有限会社
今のようなAWARDの運営スタイルは新しい茶種・部門が出てきていいと思います。スタッフの方は次年度の茶種の部門とか考えられるのは大変でしょうけど。次年度どういう茶種が出てくるのか予想しながら楽しめます。昨年フリースタイル茶が茶種に出てきた時、どの様なお茶を出品茶として期待されているのか、要領を必死に読んでもわからなかったので事務局に問い合わせもしました。その時の印象 と入賞されたものも違っていて。高宇さん(実行委員)がヒカリエで説明もしてくださっていましたが、そのような新しいものを追求する姿勢は面白く感じますし、今のこのようなスタイルは維持してもらいたいと思います。
お茶は一緒に食べる食材やその時のシーンによって使い分けるものでありますし、コロナ禍で生活スタイルもかなり変わってきていますので、こういう時に飲むお茶としてあなたはどのようなお茶を提案しますか?というような、テーマとそのための条件の決まった茶種の部門も一部にはあってもいいかもしれませんね。
カネトウ三浦園
やぶきたや深蒸しは受賞しにくい。煎茶の人・深蒸しの人が大賞をとってもらいたいですね。
色が青くて味が濃いという流行りで選ばれ、今の傾向なのかもと思うけど、やぶきたで勝負するにはどうなのか、結果に出ていません。今後もやぶきたを出しつつも品種も狙っていきたいです。賞を取ることによって知名度はとても上がるので何かしら引っかかっていきたいと思います。
個人的には形状審査がなくなったのは寂しい。味には関係ないとかもしれないけど復活してほしいです!
自分にもらったコメント結果は報告書ができるころは3月なのでもう少し早くに知りたいです。
メールなどで良いので。営業トークに使えるんです!少しでも採用してください〜(笑)
さしま茶 吉田茶園
去年、桑原さん(実行委員長)が渋みもいいんだよねといっていたので今年は期待していました。今年その部門ができて、渋みがいいお茶を出そうと思っていたんです。
AWARDはSNSの発信が少ないと思います。主催側の方がツイッターなどでの発信をこまめに出してもらうのがワクワク感が伝わって良いと思うんです。若い方がお茶面白いと言ってるのも聞こえます。
息子がお茶を使ったアルコールをイベントで提供した折に、若い方に評判が良くたくさんの人が来てくれたと聞きました。この流れにAWARDが乗っていかないと勿体無いと思います。
急須はいいけど他の方法も含めて広げるべきです。これだけのカテゴリーのお茶を評価するイベントは他にないのでAWARDがリードしていってほしいですね。
丸高農園
茶種がありますが萎凋させたお茶を出しているから煎茶、釜炒り茶で出したりなどしています。
軽く萎凋させたのも釜炒り茶として出したりしていました。
萎凋した煎茶とかは煎茶に出さない方が良いのではと思ったり、萎凋したほうじ茶はどこに出したらいいのかと思うこともあります。
今は特徴が出せそうなところに出してみていますが萎凋のあるお茶が評価にどうつながっているか知りたいものがあります。
報告書に評価基準は書いてありますが、お茶自体の区分がわからずどこに出そうか迷っているところがあります。
株式会社銘茶関口園
香りのお茶部門で出していました。今年は新しい部門渋みの部門に出してみようと思っていました。
一昨年AWARDに行った時の印象として、周知方法が足りないように感じたので、もう少しメディアを利用した方が良いと思います。民放、新聞など利用してほしいですね。やり方はいろいろあると思うんです。
会社ではお茶の淹れ方講座などやっていて、ファンの人も出てきました。そう言うやり方もあると思います。
来年出すとしたらやぶきた100%でAWARDに出せるお茶を製茶してくれる方と共に作り、出品したいです。
株式会社新緑園
現状良いものにしようとしてどんどん細分化されているように思いますが、「AWARDは飲む人の直感で決める。」それでいいと思います。あくまでもマニアックな人の品評会にはならずにいてほしいです。SNSの展開も事務局もやっていって、その上出品する各社もやるように依頼を発信していくのが良いのではと思います。
<本間(TOKYO TEA PARTY部長)>
皆様に受賞茶の話、今後作っていきたいお茶の話、AWARDに期待することなど、スタッフとして、色々話していただけてとても励みになりました。
顔を見ながら全国の出品者の皆様との交流は今後も続けていくことはAWARDを良くするために続けていくべきと確信いたしました。
皆様のご意見を受け止め、今後の日本茶AWARDに生かしていきたいと思います。
ありがとうございました。
▶︎第2回目 日本茶AWARD出品者(受賞者)へのZoomインタビュー