2020年10月27日 19:00 ~ 21:00 開催
聞き手:奥富(日本茶インストラクター協会東日本ブロック長)
本間(TOKYO TEA PARTY部長)
竹内(日本茶AWARD東京事務局)
●自己紹介(敬称略)
有限会社岡田商会
私は長崎でお茶屋をしております、岡田商会の岡田浩幸と申します。2017年に出品させていただいて、その時にプラチナ賞、日本茶大賞を受賞させていただきました。
[プラチナ賞受賞]
2017 蒸製玉緑茶(無被覆以外) 別煎やまぎり「味わいを感じる緑の滴」
株式会社小野原製茶問屋
私は佐賀県嬉野市で製茶問屋を営んでおります。去年(2019年)初めて出品させていただきプラチナ賞をいただきましてありがとうございました。
[プラチナ賞受賞]
2019 蒸し製玉緑茶(露地以外) うれしの茶 かぶせ さえみどり
2019 釜炒り茶 うれしの釜炒り茶 かぶせ おくみどり
土屋農園
川根と言えば一昔前は誰もが知っている産地でした。私はそんな川根のお茶農家です。
日本茶AWARDは最初の年と二年目に出品をして一年目にプラチナ賞、二年目にファインプロダクト賞をいただきました。
[プラチナ賞受賞]
2014 普通煎茶
つねき茶舗
岡山県の倉敷駅前でほうじ茶焚いて作っています。恒枝(つねき)です。つねき茶舗っていう店の名前です。
[プラチナ賞受賞]
2014 ほうじ茶
株式会社特香園
鹿児島で製茶問屋を営んでいます。毎年毎年出し続けて4度プラチナ賞をいただきました。毎年楽しみに参加させていただいております。
[プラチナ賞受賞]
2014 深蒸し茶
2015 深蒸し煎茶
2018 深蒸し煎茶(無被覆以外) 雪ふか 極2号
2019 普通煎茶(露地以外) 若わかつみ 極2号
株式会社山亜里製茶
静岡県御前崎市の株式会社山亜里製茶の増田です。2017年に地元の「つゆひかり」でプラチナ賞を受賞しました。
[プラチナ賞受賞]
2017 深蒸し煎茶(無被覆) 牧之原 つゆひかり
●受賞したそれぞれの受賞茶についてお話をお聞かせください。
株式会社山亜里製茶
「つゆひかり」は静岡県の奨励品種で、御前崎市ではいち早く2000年ごろから「つゆひかり」の栽培を行政、生産家、茶商が一つになって推進してきました。自分たちも地元の「つゆひかり」を売り出すために、かれこれ20年くらいやってきました。
「つゆひかり」という品種は「やぶきた」よりも水分を持ちたがる品種で「やぶきた」の感覚でお茶を揉んでしまうと粉々になって香りも飛んでしまいます。毎年気象条件も違う中で、皆さん試行錯誤しながら生産してくれています。浅蒸にすれば形もできて香りは良くなりますが、味は淡泊になるので、自分たちは色も良くて味もマイルドで且つ、香りもちゃんと残っている三拍子そろった「つゆひかり」を求めて、生産家さんと一緒にやってきました。深蒸しの「つゆひかり」の方がよりおいしいと思っていましたので。
株式会社特香園
問屋業として協力していただける生産家さんと毎年試行錯誤しています。うちが出品しているお茶は、数多い生産家さんから仕入れたお茶を再度コンテスト的に弊社の中で鑑定を重ねたもので作る、ということをしています。(初年度に出品したときは)弊社が販売している深蒸し茶が、どの立ち位置にいるのか検証してみようというところから始まりました。お陰様で初年度から評価をいただいて、(自分たちの)鑑定する方向性が間違ってないよね、という検証にもなりました。我々がいいと思っても一般消費者が全然評価しないようなものを作っていては危険なので。
実は2010年に私が鹿児島県の青年部の団長をしたとき、今までの品評会の在り方がより良いお茶つくりの指針とはならないでしょうと考え、「鹿児島うまい茶グランプリ」というものを主管しました。残念ながら3年ぐらいでなくなりましたが、そういう思いをずっと持ってきただけに日本茶AWARDができたということは非常に嬉しかったですね。私もすくい網*1ではなくて急須で審査する、浸出液で審査するというような形で2010年に行って。その後、日本茶AWARDもできたものですから、我々がやる必要もないかと、笑。
(竹内:背負っちゃった?笑。ちょっと背負っちゃいましたよ~。)
特香園:いえいえ、笑。
つねき茶舗
ほうじ茶を作るのは僕で3代目ですが、親から教えてもらったレシピで組んで、自分で覚えている色とか匂いとかに近づくように作ります。うちの機械はもう70年くらい使ってるんで、だいぶガタガタで、もうずっと付きっ切りで見てお気に入りの色と香りになるように持っていく、っていうことをやっています。ちょっとお客さんに話しかけられたらもう焦げたの出てくるから「わーっ、ちょーっ」とかいう感じで。まあ調子良いときもあるんですけど。
(司会 奥富:恒枝さんがプラチナ賞を取ったことで何か変化がありましたか?)
つねき茶舗:自分が親から引き継いだ後も友達とかに美味しいと言ってもらっていましたけど、これしか飲んだことなく育ってきましたから、改めて作るときに自信が付きました。これ美味しいんだなと。なんか、モチベーションが、ガっと。
土屋農園
川根は生産地でして、町の支援もしっかりしてますから、やはり全品*2を目指して取り組みを続けているんですね。全品は最高峰のものを作るというよりも、茶師としての基本を身につけなきゃっていうので続けています。ただそれと消費者の嗜好っていうのは別で、AWARDに出品することでその疑問を解消できることもあるんじゃないかなと。
最初の年に出品したお茶は、全品と同じ畑から基本に忠実に作った「やぶきた」で、火もしっかり入っていました。プラチナ賞をいただけたことで、基本としては全品も間違っていないことも確認ができました。
3年目から出品を見送ったのは、生産者が日本茶AWARDに向けたお茶を出し続けるのが難しいなって思い始めちゃったんです。農家はお茶屋さんが求めるものを供給するのが仕事ですから「土屋さんこうゆうお茶作ってくれない、それでAWARD出したいんだけれど」というパートナーみたいなお茶屋さんが出てこないかなって思っていて、生産者として出すのを見送っています。次の目標はパートナー探しかな。うちのお茶を原石に磨いて、製品にして化けさせてくれるお茶屋さんが出てきたら提供したいなと思っています。
(司会 奥富:なるほど。中止になった今年の日本茶AWARDには「渋みのお茶部門」があったんですがご存知ですか?)
土屋農園:すいません、見てないです、笑。あったんですね。
(司会 奥富:いい渋みっていうのがお茶にはあるはずだから、それを消費者の皆さんに伝えていけないかということで、まず「渋みのお茶部門」を作ろうとしたんですね。「渋みのお茶部門」いかがでしょうか?)
土屋農園:渋みはお茶の持ち味なので、渋みがゼロというのは絶対にないはずですが、定義が凄く難しい。渋みの審査はそのお茶の持ち味の渋みがきちんと出ているのかどうかみたいな見方をするんだったらありかもしれないです。後は渋いだけの勝負じゃなくって、お茶はやっぱりバランスだと思いますのでそこかな。答えになってなくて、笑
(司会 奥富:なるほど。実行委員会としてはハードルが上がった気分ですけれども、笑)
土屋農園:すみません、笑。どんどんハードル上げさせてください!笑。質問ですけど、なんで「渋みの部門」に行こうと思ったんでしょう?
(司会 奥富:これまでのAWARDのプラチナ賞の日本茶大賞を振り返った時に、被覆をした蒸し製玉緑茶と玉露しかとってないんですよね。そうゆう意味では、うま味に特化したものが注目をされているようなところがあって、お茶って多様性で考えたときにそれだけではないよね、その多様性の中で渋みっていうものがもっと評価されてもいいんじゃないかって。それを(消費者に)再評価してもらうにはどうやればいいんだろうと議論になりまして、じゃあ「渋みのお茶部門」を作ってやってみようっていう風になりました。)
株式会社小野原製茶問屋
私は去年(2019年)初めて出品しました。隣の長崎県の方は良く受賞をされてて、佐賀県の若手が結構出品してたんですが取れないということで、去年「東彼杵町と嬉野市は隣り合って市場も一緒で、同じ原材料を取り扱っているんで、もっと丁寧にやりなさい」とか言ってたら、若い人から「そんなこと言うなら自分が出してみれば」って言われて、笑。それで去年出品したんです。
今やっぱり「甘いお茶」っていうのが人気で「さえみどり」の蒸し製玉緑茶を出品してみようと。あと釜炒り茶の本道からは外れるのかなとも思ったんですけれども、被覆をした甘い感じの「おくみどり」の釜炒り茶も出品しました。幸運にもプラチナ賞を取れたんで、後輩たちから文句を言われなくて済んだんですけども、笑。
(司会 奥富:小野原さんが考える本来の釜炒り茶ってどんなお茶ですか?)
小野原製茶問屋:私がお茶を始めた三十数年前っていうと、釜炒り茶ってほんと真っ白な釜炒り茶だったんですね。白ずれ*3して、白ければ白いほどいいと言われて。その真っ白な釜炒り茶が香ばしくて美味しいお茶だったんですよ。でもその白いのが、カビが生えてるように見えると言われて。
(竹内:え!)
小野原製茶問屋:それでなるべく蒸しに近づけるような釜炒り茶が出てきて、ほんとの釜炒り茶が少なくなってきました。昔の釜炒り茶は香ばしくてもっとおいしかったな。ただどうしても消費者やお茶屋さんに選んでもらうと蒸しばっかり取られるんで、選んでもらえるようなお茶を作るには、どうしても蒸しと一緒の旨みを持ったもので、なおかつ釜炒りらしい、あっさりしてくどくない感じのものだと割と消費者の方にも選んでいただけると思います。今品種ものの釜炒り茶を研究しているというか。
有限会社岡田商会
うちは2017年に初めて出品させていただきました。その年、長崎で初めて全品が開催されて、それに合わせていろんなお茶屋さん、生産農家さんに広く呼び掛けて、長崎県内では一番の生産量を占めてる東彼杵のお茶を日本茶AWARDでももっとアピールしていこうと、うちの方も出品させていただきました。
せっかく出品するということで、特別に良いお茶だけを厳選して合組*4してみたらどういったお茶ができるのかと、何回も試飲しながらこれだったらある程度評価をいただけるんじゃないかなと言う所まで持っていって出品したら、すごい評価をいただきました。
(司会 奥富:蒸し製玉緑茶というのは精揉工程*5がありませんが、それがお茶に与える影響についてはどのように捉えてらっしゃいますか?)
岡田商会:良くお客様にも言われるのは、やっぱり開くのに時間がかかるんですね、煎茶と違って。だから二煎目、三煎目まで美味しく飲めると言っていただくことがあります。開きやすいものと開くのに時間のかかるお茶と、時間差で開いていってですね、味の変化を楽しんでいただけるんじゃないかなと。
●うま味が主役の今のお茶についてどう思われるか、そしてうま味がこれからどうなっていくと思われるかお聞かせください。
有限会社岡田商会
私も受賞をさせていただいたときには渋みを抑えて、うま味とか甘みが強いようなお茶を目指したんですけれども、渋みが全くないと美味しいとも思わないですもんね。ただ渋みの感じ方が人によってそれぞれ違うので、その評価が難しいんじゃないかなと思います。ただそういった新しい取り組みをされていろいろなお茶が評価されていくのが面白い、日本茶AWARDならではなんじゃないかと思います。
株式会社小野原製茶問屋
新茶の季節に甘くてうま味の多い「さえみどり」は、確かに新茶らしくていいんですけれども、だんだん夏を経て秋になるとそれだけだと味が薄いような感じがしてきて、私も少しずつ「やぶきた」のブレンドを増やして渋みを多くしています。渋みがあってこそ後味の口に残る「良い甘さ」っていうのが出てくるので、やっぱり甘みだけじゃなくて渋みも適度に感じさせるようなブレンドも必要になってくると思います。
(司会 奥富:いいお茶ってそうですよね。いつまでも余韻で、口がほんのり甘い。)
小野原製茶問屋:それがお茶の一番良い所かなと、ですが、改植の補助金が新しい早生品種の「さえみどり」とか「つゆひかり」だけに出されるんで「やぶきた」の更新が進んでいないっていうのが美味しい「やぶきた」が少なくなってる一つの要因かなと思います。
土屋農園
例えばお酒飲み始めたばっかりの時に渋みのあるワイン飲んでも美味しいって感じなくって、甘いワインを飲みませんでした?
(司会 竹内:飲んだ飲んだ、(例えば)ドイツの白ワイン、笑。)
ね、私なんかもそうでした。ドイツの猫が付いてるやつとかイタリアの魚の形をしたやつとか、笑。初めは甘くて美味しいんだけど、飲み続けてるともっと渋みがあるのが飲みたくなってくる。やっぱ段階があって、甘みっていうのは小さいころから「あ、甘い、美味しい」っていう風に身についてるんですけど、渋みっていうのはステップを踏んで学習していかないとその良さが分からない。けど、それが深みにつながっていくだろうなって私は思っていて。例えばAWARDで「渋みの部門」を作って、お茶にちょっと興味があるって言った人に「これ凄いんですよ」って言っても、理解してもらえるのかちょっとわからないなって思っています。段階を踏んでお茶の渋みを学習してもらって、その良さに気が付いてもらうっていう風な取組ができれば、渋みにスポットが当たっていくような感じがしています。
うま味の話だったんですよね、笑。うま味は好まれるものだと思うので、そこをスタートにしてどの方向に人が動いていくかってことなので、うま味はこの先ずっとあるし、お茶になくてはならないものなので。すいません、話がまとまらなくて、笑。
つねき茶舗
僕もお父さんに「美味しいお茶の見分け方は飲んだあとのつばが美味しい」って教えられたんですけど、やっぱり最初うま味で食いついて、次は後味くらいまではみんなついてくるんで、渋みの話はもうちょっとあとで「難しい話なんだ」って小出しにもっていかないと「自分にはちょっとわからんな」っていう話になったらいけないような気がして、敷居は下げてった方がいいんじゃないかなと思いました。僕もワイングラスに、氷だけで出した玉露を(数滴)入れて飲んで「うおっ!」て感動してますから、ああいうの誰が飲んでも美味しくてわかりやすいし、それがやっぱり入り口なような気がしました。
株式会社特香園
うま味と甘みは若干違いますよね。例えば形状のお茶でそんなに肥やしを与えてないお茶でも妙に後味に甘さを感じる一方で、直接的に全窒素*6をどんどん与えたようなお茶はパワフルにうま味が強いと感じる。そのうま味が非常に評価されているAWARDの方向性についてですけど、緑茶は緑の美しさと天然のうま味が一つの立ち位置ではあるんだろうと感じます。
ただすべてのお茶にそれを求めるわけでもなくて、例えば僕の尊敬する東京のお茶屋さんに「そりゃ確かに鹿児島の「さえみどり」も「ゆたかみどり」も美味いよ。だけど羊羹と飲んでみ?やっぱり一緒に飲むとなったらボディはいるんだよ。」と言われたことがあります。
だから食をつなぐお茶の役割は色々あっていいんだろうし、AWARDが「渋みの部門」を作るのもありだろうと思います。で、それがペアリングティーだとか、いろいろなレストランへの提案にもなりますよね。分かりやすい味の種類の提案という意味において、これは渋みがきついですけれども「切れ味の爽快な渋みが特徴です」とかね。(ペアリングとして)結びつけることも必要でしょうし、結びつける活動をすることによって消費者も育ってくると思うんですよね。
もちろん我々も渋いお茶を使ってはいるんですよ。例えば非常に甘い「さえみどり」も甘いだけだとのど越しも感じないし、サラッと入っただけで何の印象もないっていうことが起こるんですね。ですからタンニンがしっかりしたものをブレンドして、ボディをしっかりさせた上で、その上に踊る甘みというか。
株式会社山亜里製茶
うま味についてってすごい難しいなと思って聞いてたんですけども「つゆひかり」も評価されてきたとは言っても、やはり「やぶきた」の渋みがあってうま味があるバランスを言うお客さんも実際多いんです。
「お茶の味っていうのはもっとこういう味もあるんだよ」っていうのを、消費者に再認識してもらうために、こちらから発信していくことも必要かなと思います。例えば「やぶきた」の深蒸しですと付くか付かないかみたいな弱い火入れでの火香のうま味とか甘みとか、そうゆう味も消費者にわかってもらえるといいかなと思いました。
●これから日本茶AWARDに何を求めるか、どんなお茶づくりをしていきたいかなど未来についてお聞かせください。
株式会社山亜里製茶
茶業界ではAWARDも知名度が上がって浸透してきましたが、世の中的にはこれからのところもあると思います。今年コロナ禍で延期になりましたが(4月に予定されていた)CRAFT SAKE WEEK2020*7など異業種とのコラボイベント、業界の外に出ていく機会を作っていただき、いろんな人たちにお茶の良さをPRできたらなと思っています。
株式会社特香園
これだけの成果と、これだけ茶業界の中で期待されている事業ですから、実行委員会の皆さん大変だと思うんですけども、ほんとにお茶を愛してられる方々が実行委員会に入っているので、日本茶のあり方とか方向性を皆さんが真剣に悩んでやっていけば、必ずやいい方向性になると思っています。お茶は常に食に寄り添ってきたものだと思うんですね。その形を消して失わせないように、各地でやってる美味しい淹れ方や子供に対するお茶の授業も非常に大事だと思っています。まあコロナのお陰で、こういう形でしっかりと話をできるのもいい機会ですので、皆さんで考えていきましょう。ただすいません鹿児島っていうのはなかなか東京まで行っていろいろお手伝いができないので、出品するばっかりですみません、ってそこのところだけですね、笑。
つねき茶舗
日本茶大賞を取ったお茶をどっかの王様でもいいし、イギリス王室でもいいし、名のあるニューヨークのファッションショーでもいいし、なんかすごい所に提供されましたとかいうのが毎回あったりすると、皆が「すごいな、それ」って思うんじゃないかと。そんなのがあったらいいなと思っています。
土屋農園
どんどん変わっていけばいいと思っています。AWARDもせっかく東京でやるっていうことの意味を持って進化していってもらえればいいかな。審査法にしてもコンクールという形が良いかどうかっていうのも含めて、消費者に知ってもらうとか、教育とかそうゆうものに発展していけば嬉しいなと思います。静岡で世界お茶まつりをやってますけど、日本茶AWARDが世界お茶まつりみたいな進化を遂げて、一年に一回東京に行けばいろんなお茶が飲めて選べて買えてっていうような、お祭りのように東京がお茶の色になる日があってもいいのかなって思うんですね。今はコンクールでどっか閉ざされてるような感じがするので、もっと広がっていけばいいんじゃないかなって思います。
三次審査の消費者のテイスティングもうま味のあるお茶がずっと日本茶大賞だって言ってたんですけども、例えばそのお茶を毎日飲んでたら大賞になるのかって思いませんか。あの審査方法で一回だけ飲むから、そうゆうお茶がいいっていう風に選ばれるのかもしれません。で、そうなると凄い旨いお茶が上に行くんじゃなくて渋いお茶が上に行くかもしれないし、全品に出るようなお茶よりもほうじ茶が上に行くかもしれないし、嗜好品としてみたときに審査をどんな形で行い、どう評価をもらうかっていうのはまだまだ研究の余地があるんじゃないかな。
(司会 奥富:違う審査の可能性というか、お茶の違う側面をもっと引っ張り上げるような審査を取り組んでいってもらいたいということでしょうか?)
土屋農園:そうですね、例えば毎日このお茶を飲んでください審査みたいなの。朝昼晩飲んだらどうなのかとか、シチュエーションを作って飲んだらどうなのかとか、やっぱり審査法って一つじゃなくて、それこそ全品なんかと比較するとやっぱそこに行かないとAWARDの強みっていうのは(出ない)。全品の審査はこうだけれども、消費者が選ぶのはこうだよって言える審査になるのには、まだまだいろんな可能性を探ってもいいんじゃないかなと思います。
株式会社小野原製茶問屋
いろんな審査方法を試行錯誤して、いろんなお茶が選ばれるようなAWARDにしていってもらいたいと思います。今後のお茶については、毎日あまり意識せずに飲むようなお茶も変わらず普及させていかなければいけないですし、今は産地や品種や茶種などの情報もたくさん出てきまして、自分で選んでこだわった飲み方をされる消費者に対してのアプローチも積極的に取っていって、高品質なある程度高いお茶を飲んでいただくような方もだんだん増やしていかないと、とは思っております。
有限会社岡田商会
日本茶AWARDっていうのは皆さんが期待している大会でもあるので、消費者の方々をいっぱい巻き込んで茶業界が盛り上がるように発展していけばいいかなと思っています。今の三次審査の仕方では、やっぱりうま味が強いお茶が印象に残りやすいのかなって思うんですよね。(出品者の)皆さんがそれを目指してお茶つくりをされて、みんなが同じような出品になっていくっていうのも、やっぱり面白くないかな。渋みの話もでましたけども、単体で飲んだら渋いだけかもしれないけど他のものと一緒に飲んだら「あ、こっちの方が絶対美味しいよね」っていうペアリングもあるかもしれないですし。今の三次審査をじゃあどう変えるかというのは思いつかないんですけれども、いろんなお茶が評価されるような可能性を秘めた大会になっていけばもっといいのかなと思います。
<司会 奥富(日本茶インストラクター協会東日本ブロック長)>
今回のお話では日本茶の多様性というのが大きなキーワードだったと思います。うま味っていうものを考えるとやっぱり渋みっていうものも大事だよねというお話から、また日本茶AWARDに様々なお茶が集まってくるような予感を感じました。これからの日本茶、もっともっと楽しくなっていきそうですね。本日は長時間にわたりありがとうございました。
*1 すくい網…茶を鑑定や審査する際に使う網のこと
*2 全品…全国茶品評会
*3 白ずれ…何度も釜で擦ることで茶の表面に細かな傷がつき、茶が白く見えるようになること
*4 合組…茶をブレンドすること。
*5 精揉工程…茶の製造工程の一つで、針の様な形を作る工程のこと
*6 全窒素…茶に与える肥料成分のうち、うま味に直接的に関係する窒素成分の総量のこと
*7 CRAFT SAKE WEEK2020…中田英寿氏がプロデュースする日本酒イベント https://craftsakeweek.com
▶︎第1回目 日本茶AWARD出品者(受賞者)へのZoomインタビュー